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七夕の夜。


空を見上げると、ふたつの星が、はるか天の川を隔てて輝いています。


年に一度だけ巡り逢えるという、織姫と彦星の物語。

 

この夜、空に浮かぶ銀の橋――


それは、無数のカササギたちが、ふたりの再会のために羽を広げてつくる橋なのだと、伝えられてきました。

 

想ひが、天に届き、命を越えて、心をつなぐ。

そんな祈りにも似た物語に、そっと耳を澄ませたくなる夜です。



 

 

七月の夜空に

 


ふたつの星が ひそやかに瞬く

 

ひとりは糸を紡ぐ姫

 


ひとりは野に牛を追う青年

 


かつてめぐり逢ひ 共に過ごした日々は

 


天の掟により はるか天の川に隔てられた

 

天をも動かす、めぐり逢ひへの思ひ

 

年に一度のこの夜

 


星たちのために 鵲の群れが舞ひあがる

 


銀の翼を広げ

 


一羽また一羽と 天の川に橋をかける

 

名もなき小さな命が

 


大いなる愛を運ぶとき

 


星の声が風に溶けて

 


この地上にも かすかに届く

 

今日もどこかで

 


だれかが だれかに

 


想ひを届けようとしている

 

――その願ひに、

 


ひとつの橋が そっと架けられますように

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